2018-10-20

【社員を活かす社長の視点】第6話:働き方改革のジレンマ、うちの会社の働き方改革どうしたら?

ビジネススタイリスト代表の大西美佳です。

働き方改革関連法が整備され来年4月から施行されます。
“一億総活躍社会の実現にむけて”と厚生労働省のパンフレットに書いてあるように、働き過ぎを防ぎ、多様な働き方を選択できる社会を実現するための労働時間法制の見直しと、正規と非正規の不合理な待遇差をなくし、多様で柔軟な働き方を選択できるように、労働基準法、雇用対策法、安全衛生法、労働契約書、パートタイム労働法、派遣法等が改正されます。

これらの法の解説を行い、法令を遵守していくためにどのような対策を採るべきかというアドバイスを行うのが、社会保険労務士の仕事です。

特に残業時間の上限規制は、70年前に制定された労働基準法においての初めての大改革だ、罰則が適用される!と新聞などでも書きたてられています。

年720時間を超える残業は不可、年の半分の6ヶ月については、月45時間以内に収めなくてはいけません。また、休日労働分も含めて、複数月平均80時間以内、単月100時間未満との縛りが増えました。

こうなると、残業抑制、管理が必要になるので、長時間労働是正のための「業務効率化や生産性向上」に取り組むことになります。また、別の視点では、有休の取得促進や育児介護をしながら働ける職場作りなど働く環境の整備も課題に挙げられます。

そして、同一労働同一賃金の対策もしなければなりません。正社員とパートの賃金差の整合性をとり、差の理由をきちんと説明できるようにする。また、異動など含めた人事制度や評価の仕組みを導入し、正社員と正社員以外の者の職務内容や責任の重さや範囲の違いを明確にする必要があります。

こうなると、中小企業としては、もう何からどうやって手をつけていいのか分からなくなってきます。製造業などでは、業務が増えていて、人手不足、採用しても集まらないため、残業が恒常的になっている会社も多く、時間外の削減といっても簡単にはできない状況になっているのが現実です。

これらの企業に課されている多くの改正法の基準やルールに応じて、真面目に1つずつ対策していくと、御社の働き方改革は必ず失敗します。

もちろん、法律を遵守しなくてもいいという意味ではありません。

例えば、残業上限があるので、強制的に残業時間の上限を設けることで、業務改善を促すというやり方もあると思います。確かに効果はあるようです。営業部門が恒常的に午後10時、11時まで残って残業していた会社が、社長が本気をだして、帰社時間を午後8時に決めてそれ以降は残業させない。どうしてもやらないとイケないときは、社長に自ら許可をもらうなどのルールが功を奏し、いまでは全営業社員が午後7時までには帰社するようになった。そして、営業成績や利益は以前と変わらないという成功例も見てきました。しかし、成功した他社事例をそのままマネてもうまくいきません。

なぜなら、これらの打ち手は目先の問題に反応しているだけの手段だからです。

ゲームのもぐらたたきを思い出してください。もぐらがでてくるから、たたく。その繰り返しです。一旦、もぐらは引っ込みますが、また別の穴からでてくるのです。もぐらの退治ではなく、根本から問題を解決する視点が必要です。

今回の働き方改革が法制化されたからといって、法対応のみを考えて、対処をしていったとしても、望む結果とならないだけでなく、安易な業務改善や労働時間削減、また、システムの導入などが、会社にとって大きな損失をうける危険をはらんでいます。
生産性向上、業務効率化などをうたい文句で、システム会社の売り込みも多くなっていますが、慎重に検討したいものです。

自社のとっての働き方改革とは、いったい何を目的にするのか。働き方改革をとおして、自社の社員の働き方をどうしていきたいのか、どのように働いてもらいたいのか、正社員とパートの違いはどう捉えているのか、具体的な会社の未来像を描いていないことこそが問題なのです。

いくら働き方改革のための、業務改善や労働時間削減をおこなったとしても、改革のために社員が疲弊するなどの弊害がでることになります。また、目線の低い社員からは「残業できないんだから、ここまでしか仕事しません。」などと言ってくることも考えられます。

すると、できる社員に仕事のしわ寄せがくる、社内の雰囲気が悪くなる。協力体制が取れない。人が辞める。さらに業務が滞る。クレームが発生する。社員のモチベーションが下がるなどさまざまな問題が起こってきます。いろんなところからもぐらが顔をだすのです。

ですから、この働き方改革を良いチャンスと捉えて、社長は自社の働き方のビジョンを示し、また、そのビジョンにあわせて、社員ひとりひとりの働き方のビジョンを明確にさせましょう。働く側も、働かされているという意識から、自らの人生においていまの仕事で自分を活かすことを意識付けすることで、内発的なやる気を促し、目線をあげさせましょう。

そして、組織一丸となり、成果を求めていく筋肉質の組織へと変革させていきましょう。

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