2018-11-20

【社員を活かす社長の視点】第7話:残業が減らない本当のわけ・その1

ビジネススタイリスト代表の大西美佳です。
「ここ数年残業を減らすようにいろいろ試行錯誤してきたんですが、なかなか実現しなくて困っているんです。過重労働で社員が倒れたりしないか心配なんです。」

人事担当役員からは、本当に何とかしたいのにうまくいかないという切実が思いが伝わってきました。

自社でやってきたが、うまくいないので、もう外部の方にお願いするしかないとご相談に来られました。働き方改革が叫ばれるもっと以前の話です。

長時間残業によるメンタル不調や過労死など労災認定がされるようになり、会社の責任が問われるようになったことを懸念して、なんとか改善したいというご希望でした。

改善策として、全社員70名への実態アンケートと個別ヒアリングを行い、管理職の研修と全社員向けの研修を実施しました。

個別ヒアリングでは、様々な課題や要因を発見することができました。そして、全社員参加の研修で、具体的な削減のアクションプランも出そろって、今後実行していくことで、残業削減に向けて取り組んでいけるぞという従業員の前向きな意欲も高まったのです。

が、しかし、最後に大きな落とし穴が待っていました。

各グループごとのアクションプランの発表を終え、研修終了の締めに、その部門のトップの方から一言お願いしたところ、

「お前たち、こんなことでお客様の期待に沿うことができるのか、売上を維持し、シェアを拡大していかないと生き残れないんだぞ」的な熱弁をふるわれました。
(たぶん、社員にハッパをかけたかったんでしょうね。労働時間減らしても当然売上はあげろよ、の念押しの意味合いだったと)

前日、そのトップと役員の方と研修前に食事もご一緒させて頂き、会社を良くする、残業を削減しても売上や利益を守るために、取り組めることをやっていくのだというコンセンサスが取れていたと思っていたのですが、私どもの認識が甘かったようです。せっかくのヒアリングや研修が数分のコメントで無駄になった瞬間でした。イキイキとしかけた従業員さんの顔が、すっかり沈み、やっぱりか・・という諦めの空気感を感じました。
この状況では、残業は削減は望めません。

この恥かしい失敗から多くのことを学びました。

上っ面の削減対策では、問題は解決しない。トップが本気で変えたいと思っていなければ、変わらない。

2019年4月から時間外の上限規制が始まります。

総務から時間外上限に対する各部門長や対象者への事前アラーム通知などを行うことで残業削減に向けての意識を促すこと等がなされると思います。

何度も指導している(言っている)のですが、改善されない。

冒頭の役員の方は、長時間労働者に毎月ヒアリングしたり、業務の内容の確認、他への業務割り振りなどを指導していました。

個人の問題ではなく、その部署の、その上司の、各自の仕事のやり方を根本的に解決しなければ現実は変わらない。

個別ヒアリングの際、転職組の方が「この会社は変わらないですよ。」と小声で言った一言が印象に残りました。

残業削減は、個人の働き方よりも、会社の働かせ方を見直すところから始めてみないと、改善策を社員に出させても、やる気をそぐだけという残念な結果に終わる。

そして「色々とやってきたのですが、残業が減らないんです」という「色々とやってきた」ことの中身に踏み込んで何をどうしてきたのか、検証することも重要です。

残業してでも、結果を出せと思っているトップの下では、残業は絶対になくなりません。
成果を上げても定時で帰る社員を「頑張っていないじゃないか、あいつは」という見方をしています。

長時間働き、成果が出ていない社員は、その頑張り方が間違っているから結果がでていないのです。頑張り方が正しい方向に向くよう、仕組みを考える。それがトップの役目です。仕事の効率が悪い「人」に目を向けるよりも、残業が起こる「背景」、「構造」に目を向ける。

何が原因で残業が発生してしまうのか?

受注の受付時間、お客様への納期回答、工場との連携、書類のやり取りなど

改善できる部分を洗い出し、改善の糸口としていきましょう。

★佰食屋(ひゃくしょくや)さん、ご存知ですか?

テレビで拝見したのですが、参考になるのでご紹介します。
京都にある国産牛ステーキ丼のお店。

オーナーの女性経営者が子育ても仕事もやりたい、そのためにやったことは、一日100食限定とした。

これにより、午後2時ぐらいには仕事が終了する。そして、売り切るので食材の廃棄ロスもない。飲食店といえば、長時間拘束、深夜まで仕事。社員さんはシングルマザーや他社を受けてなかなか採用されなかった人なども働いている。オーナーは、人材について真面目にコツコツ働く人を採用している(と言ったと記憶しています。)ガツガツやりたい人はうちに向かない。とおっしゃっていました。

家族との時間もあり、安定した仕事ができる職場を提供している。

世の中にはいろんな会社があります。どんな働き方をしたいのか、どんな職場で働きたいのか、その人の選択だと思います。

自社の働き方スタイルが明確なので、それに合った人が採用できる。
こういう考え方がいまの時代にフィットしたスタイルだなと感じました。

 

 

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