「働き方改革関連法」の ポイントと求められる実務対応
ビジネススタイリストの大西です。
働き方改革関連法のポイント解説と実務対応について、セミナーを行いました。
1.働き方改革の全体像
大きくは、以下の2つです。
①労働時間法制の見直し
・残業時間の上限規制
・「勤務インターバル制度」の導入(努力義務)
・年次有休休暇の年5日取得を義務付け
・月60時間を超える時間外の割増賃金立引き上げ(中小企業も25%→50%へ)
・労働時間の状況を客観的に把握するように義務付け
・フレックスタイム制の清算期間の延長(1ヶ月→3ヶ月)
・高度プロフェッショナル制度の新設
②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
・均衡待遇・・・不合理な待遇差を禁止
・均等待遇・・・差別的取り扱い禁止
2.施行日順でポイントのみ解説します。
●2019年4月1日施行
①残業時間の上限規制(中小企業は2020.4.1~)
原則、月45時間、年360時間を上限とする。特別条項を締結した場合であっても、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働含む)
・月100時間未満(休日労働含む)
※月45時間を超えることができるのは、年の半分である6ヶ月以内にしなければならない。
年間、複数月の上限を超えないように管理するには、個人ごとに毎月の残業時間を記録し、集計して管理する必要がある。上限をこえそうな者に対するアラーム通知など、手作業だと総務の労力が取られるので、システムの導入などを検討すべき。
②年次有給休暇の5日取得義務
付与日から1年以内に5日を与えなければならない。
・労働者本人の時季指定による取得
・計画的付与
・本人の希望を聞いたうえでの使用者による時季指定
最後の方法が今までになかった取得方法です。5日間取得できていない社員がいるかどうか、確認していく必要があります。
●2020年4月1日施行
①同一労働同一賃金(中小企業は2021.4.1~)
諸手当について、個別に整合性をみていく必要あり。非正規なく、正社員しか支給されない手当は、問題ないかどうか。皆勤手当や通勤手当、住宅手当など。支給する趣旨や目的をはっきりさせること、支給しない理由があやふやだと、同一の支給を求められる。
そのポイントは、職務内容(業務の内容+責任の程度)、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の3点をもとに判断される。
●2023年4月1日施行
①月60時間超えの残業割増率50%が中小企業にも適用される
5年後の適用前に、長時間残業を減らす努力をしましょう。
36協定も新様式になり、健康及び福祉の確保措置など記載項目が増えますので、事前に確認しておきましょう。
残業時間の管理、長時間残業の是正など時間に対する規制が強まります。
単純に時間を減らすことよりも、社員一人一人の残業が適正なのかどうか、上司が見極める力を養ってください。残業は個人が勝手に行うものではありません。業務命令により行うべきものです。残業はコストです。定時内で仕事が終わるような仕組み、また、個人の能力評価などあるべき姿をこれを機会に考えてみてください。
実のところ、適法な状態にするだけでは、会社は良くなりません。
法改正を機会として、正社員とそれ以外の従業員の違い、人事制度、処遇、長期的に良い人材が活躍できる自社の制度設計や労働環境の整備など、会社は、長期ビジョンに基づいた対応と、人生100年時代、長期的に働くことになる働く側の従業員も、会社任せではなく、改めて自分の頭でしっかりと考える機会としたいものです。