【社員を活かす社長の視点】第4話:社員からブラック企業だと指摘される会社の本当の理由
ビジネススタイリスト代表の大西美佳です。
このところの台風上陸により、自宅待機や早退など社員に対して、給料は支払うべきかどうかの問い合わせが多くありました。会社の指示による場合は、給料または休業手当を支払わなければなりませんが、自己判断の場合は払わなくても良いことになります。しかし、社員の側からすれば「自分のせいじゃないのに、給料がカットされるなんて納得いかない」と憤慨する人もいます。
また、こんな要求もあります。
社員:「60分間の休憩がきちんと取れなかったので、その分割増賃金払ってください。」
会社:「いや、休憩は自分できちんと取って下さい」
社員:「だって、実際に仕事が多くて取れないんです!それってブラック企業じゃないんですか!」となんでもかんでもブラック企業扱いして会社に訴えます。
残業もしかり。与えられた仕事が定時内に終わらないのは、業務量のせいではなく、本人の能力不足であったとしても、会社には残業代を支払う義務が発生します。
なぜなら、労働基準法は、業務により拘束した時間=(イコール)労働時間だからです。工場で強制労働させられていた時代に作られた法律ですから、経営者の搾取や休憩も取らず働かされる労働者を守るために制定されました。
その時代には、大きな役目を果たしたと思いますが、サービス業が増え、IT活用の時代にはまったく世の中の実態に合っていないものになっています。
もちろん長時間労働は許されることではありませんが、ひとりひとりの働く時間の「中身や質」を問われる時代だと思います。
働き方改革で労働関係法令が改正され、残業時間上限制、同一労働同一賃金が叫ばれ、ますます社員の時間や賃金に関する関心は高まっています。ブラック企業と言われないために、対処し労働基準法を遵守できたとしても、社長の気持ちは晴れないままです。
当然ながら、法令遵守は、マイナスをゼロにするだけで、社員のやる気につながったり、業績向上などの経営状況の改善につながるわけではないからです。
労働時間を訴えてくる社員を出さないための対処法は、法令遵守の徹底でなく、社員の価値教育です。価値教育とは、我が社において働くとは、こういうことだという価値観を持てるように社員を教育することです。
会社に対して、権利主張の激しい「時間を切り売りする社員」は、自分がどのぐらい会社に貢献しているか、周囲からの評価を得ているか、には意識が向いていません。これからは、労働時間しか提供できない社員は、永久に「作業者」から抜け出せず、いずれはAIや機械に取って変わられるのです。
我が社は単なる「作業者」ではなく、新たな「付加価値を生み出せる人材」を育てていくことを目標とし、社員にはお客様への貢献を求めていく。という明確なメッセージを社長が発していくことにより、会社における働くことの価値観の醸成していく。
仕事をすることが、喜びになる、自分の価値を上げることになる。そこに意識を向ける社員が増えると自然と、権利主張だけでなく、自分がどれぐらい会社やチームに貢献しているのかを見る目線ができてきます。
権利主張している社員は、自分のことだけを見ているのです。やじるしは常に自分に向いています。そうなると、周りを客観的に見ることができず、自分は損をしている、自分は認められていない、そして、相手や会社が悪いのだという思考にならざるを得ないのです。
つまり社員の視点を「自分」から、「自分を取り巻く環境」へシフトさせることがポイントです。日頃から社員の視点をシフトさせるための、工夫や関わりが必要になります。視点が上がると視野が広がる分、判断材料も増え、適切な判断ができるようになります。
また、事前に起こりそうな問題を想定した仕事の段取りが可能になり、もちろん、業務フローの見直しなど改善点も見つけることができるようになるでしょう。
国の言う働き方改革に真面目に取り組んでも、社員の思考や価値観を変える取り組みをしなければ、経営を圧迫するだけになります。法律対応と社員の職業観の醸成、この2つを同時に着手しなければなりません。
社員の視点をあげて、生産性を高め、業務効率化を実現し、新しいアイデアやサービスを生み出す。
ブラック企業対策を目先の労務改善だけに留まらせず、未来の会社づくりのための、良い機会としてとらえ、社員の価値教育にいまから取り組んでいきましょう。