2018-06-20

【社員を活かす社長の視点】第2話:経営理念の落とし込みが社員のやる気をそぐ

ビジネススタイリスト代表の大西美佳です。

会社の目的(ビジョン)は、経営において絶対必要なものです。経営理念、社是、ミッションなど言葉や定義はいろいろあると思いますが、このコラムでは、会社の存在意義、価値観、考え方のことを「目的(ビジョン)」と表現します。目的(ビジョン)がなぜ必要なのか。言うまでもなく、社会や顧客、社員に向けて発信することで会社の社会的責任を示すことができます。また、社員への具体的な行動指針を示すことができ、企業文化の醸成や優秀な人材の確保につながる求心力としても活用できます。明確な目的(ビジョン)を打ち出すことは、企業ブランドイメージの向上にもつながり、社会へのアピールとしても効果的です。

しかし、その素晴らしい目的(ビジョン)をもっていても、実際に社員がそれを理解し、自分の行動や働く上での指針にしているかどうか、これを実現していくことは簡単ではありません。ですから、次に社長はビジョンを「落とし込む」ことに注力することになります。

「経営理念の浸透」でweb検索すると、次のような方法が見つかります。・経営者が率先垂範する・社内掲示・朝礼唱和・ホームページ掲載・経営理念を学ぶ合宿、勉強会の開催・カードや手帳にして常に携帯・経営者が常に語る等です。

経営理念を毎朝唱和することで、社員はテスト前に暗記した語呂合わせのように、すらすらと言うことはできても、“早く朝礼終わらないかなぁ”とか、“今日の仕事の段取りは・・”など頭の中では他のことを考えてその場をやり過ごしているだけかもしれません。

いろんな手段を駆使して、経営理念を落とし込む必要がある時点で、その経営理念は捨てたほうがいいでしょう。なぜなら、社員の心を熱くし、使命感を喚起するような経営理念であれば、それを聞いただけで社員が意気に感じて行動に移すからです。経営理念の唱和をさせる、社長が常に熱く語るなどの行為は、例えれば、子供が、毎朝、母親に、「早く起きなさい!」「早く食べなさい!」「早く学校に行きなさい!」と言われれば、言われるほど、言われることに慣れ、当たり前の光景となり、余計に言うことを聞かなくなります。「何度言ってもうちの子は言う事を聞かないんです。」と嘆く母親のありがちな姿。まさにこれと同じことが会社でも起きてしまうのです。

そこで、気づくべきことは、こうした外部からの刺激をいくら与えても、残念ながら、人は行動しないということです。

自らが、そうしたい(欲求) 、そうだな(同意)、 困った(痛み)を感じない限り、その人の行動は変わりません。

さきほどの、落とし込みの手法は、いずれも外部からの刺激で行動させようというワンパターンでしかありません。

言われたこと、指示されたこと、やらされたことこれらの外部からの刺激を、受け取るかどうかは、本人の選択に委ねられているのです。感度の高い社員は、外部からの刺激であっても、受け取る側の意識が高いので、効果的かもしれませんが、多くの社員にとって、経営理念は自分事ではありません。それを実行しなければ、自分に影響があるかといえば、特には何も問題がないからです。会社の目的(ビジョン)を自分事としてとらえることができるよう、外部からではなく、内発的な刺激や動機付けを行わなければ、社員は変わることはできないのです。

では、どのように関わることが、社員の内発的な刺激となるのでしょうか?

精神科医グラッサー博士の提唱する選択理論心理学では、人は内側から動機づけられて行動を選択するという。すべての行動は自らの選択である。行動を選択するのは自分、他人に行動を選択させることはできないのです。ですから、目的(ビジョン)を落とし込むことに注力するのではなく、社員が自らが「行動を選択する」ための方法はどういうものか、何があれば、目的(ビジョン)に沿った言動を行うことを選択するのかを考え、関わることで、社員を動機付けしていかなければならないのです。御社に内発的動機付けをする仕組みはありますか?

次回は、「社員が言うやる気が上がらないのウソ」をお伝えします。

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